院長ブログ

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ユース世代のメンタルヘルス

思春期・青年期の精神保健の大切さについて

サッカーやラグビーなどのスポーツで、よく「ユースチーム」という言葉を聞きます。ユース(youth)は本来若者という意味だと思いますが、大体10代から20代までの思春期・青年期の世代をさす言葉です。最近では、もう少し後の世代、大体30代くらいまでを含むときもあります。スポーツではこの10代から20代くらいが、育成の大切な時期であることから、ユースチームという特別な枠を設けているのだと思います。

ところで、このユース世代は、こころの生活史の中でも,とても大切な時期と考えられています。それは、「自分が自分である」ということ、心理学的な用語を使えば「自我の確立」のための重要な時期に当たるからです。

ユース期、すなわち思春期・青年期は、いわば、自分自身に問いかける時期であり、たとえば、「自分とは何か」、「なんのために生きているのか」、「他の人々からどう見られているのか」、等の、「自分」に関する疑問がたくさんわき上がり、苦しみながら自分自身(自我)を形成していく時期と言えるでしょう。当事者にとっては、もっとも苦しい「苦悩」の時期ともなります。
若者が自我の確立のためにたくさんの課題を乗り越えていかなければいけない時期であり、また、体と心の成長の程度がずれたり、受験や就職など環境の変化が加わったりと、こころの問題だけではない、とても負荷の多い時期に重なります。ですから、心の成長(心理的要因)、体の成長(生物学的要因)、そして環境の変化(社会的要因)などが絡み合い、解決を難しくしがちです。

そのような状況から、この重要な時期には、何らかの理由で自我の成長・確立につまずきが生じ、そのために、精神的な変調・不調が起こりやすいのです。そして、従来から繰り返し指摘されているように、自殺をはじめとして、一時的な精神的変調や、あるいは精神疾患の発症が多く見られるのだと思います。

当院では、このユース期の若者の支援の試みとして、いくつかのプロジェクト・活動を行っています。たとえば、中学校から高校、青年期にわたる若者層に重点を置いた外来診療への積極的な取り組み、こころの問題を持ったお子さんのいるご家庭の親御さんのための「家族教室」、ユース期に見られる諸問題に関する講演会の開催及び講演、小学校から高校に至る学校でのこころの問題を支援するキーパーソンである養護教諭の先生方との勉強会、などです。

 

大切なことを一つ申し上げたいと思います。ユース期の支援には、医療機関や治療が中心になるとは限らない,と私たちが考えていることです。支援はいろいろな形で必要です。もちろん薬物治療など医療的介入が必要なこともありますが、その前に、問題点を明確にして、どのように支援し、より良い方向に向けられるか、どうしたらいいのか、について、常に問いかけながら、一人ひとりの若者に対峙していく、ということです。