院長ブログ

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院長の本棚(番外編)①

意識の問題 脳は世界をどう見ているのか ジェフ・ホーキンス著

 院長の本棚番外編として、まず、意識の問題に関する三著をご紹介します。

著者のジェフ・ホーキンスは変わった経歴の持ち主です。電子工学から神経科学に転向しようとしましたが、彼の斬新な発想が大学で受け入れられず、1990年代に一世を風靡した掌にのる小型のコンピューター(PalmPilot)を開発販売するパーム・コンピューティングを設立。10年後に成功していたその会社をあっさりと手放し、念願であった神経科学研究のためにレッドウッド神経科学研究所を設立しました。そして、大学の枠を越えた研究・開発をするために、ヌメンタという会社を始めています。ヌメンタは脳を基盤としたAIを開発することを目的としていますが、同時に本著の主題である皮質のコラム(柱状構造)の理論的背景を解明するすることを目指しています。仕事と研究・興味を平行して行い、しかも成功できるのは真に才能のある人の証拠なのでしょう。

ひと世代前の著明な神経科学者マウントキャッスルが提唱したアイデアをスタートに、大脳皮質の基本構造は直径1ミリ前後のコラム構造で、それがびっしりと15万ほど並んでいることで、それぞれのコラムが別々に処理をしつつ、連絡し合っている、という発想からスタートしています。それぞれのコラムは処理だけでなく、予測をすることが主要な機能であり、その予測問題には必ず座標系がかかわっている、との重要な仮説から、大脳の機能を数理モデルを駆使して解明していくわけですが、理論展開について私にはとても説明できないので、本書をお読みいただいて、その理論の詳細をご自身で目にしてください。刺激的な仮説提案と感じました。また、現在のAIの限界を指摘しつつ、新たなモデルを大脳コラム構造に求めるという大胆さも、大変興味深いものです。なお、ヌメンタに興味のある方は英語版しかありませんが、ホームページをご覧下さい(https://numenta.com)。