院長ブログ

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院長の本棚(番外編)③

意識の問題 マーク・ソームズ著 意識はどこから生まれてくるのか 

 

マーク・ソームズ(Mark Solms)は1961年生まれ。神経心理学者でかつ精神分析家という変わった経歴の持ち主です。神経心理学では夢の脳メカニズムについての研究成果が有名です。夢をこころの深層を探る手がかりとした精神分析と、脳のメカニズムとしての夢についての神経科学の両者を統合するための臨床・研究をめざしています。

この本も、夢の研究から発展して、意識の問題を、精神分析的な視点と神経心理学的な視点から光を当てて理論を展開していきます。著者の立場としては、現在の神経科学が前提としている「意識は大脳皮質から生まれる」が誤っていることを指摘し、客観的な研究と臨床からの主観的な報告の両方を対等に尊重していくという方法論によって、意識がどこから生まれてくるのかを探求しています。

自由エネルギー原理の章あたりでは残念ながら、私は十分理解出来ない部分もあるのですが、本書はどちらかというと古典的・臨床的な地点からスタートして議論が進んでいるように思えます。そんな中でも、明確化しようとする構えが強く感じられ、1つの立場からの指針を示してくれます。一読に値する一書だと思います。