院長ブログ

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院長の本棚(番外編)⑦

われらの古細菌の末裔 微生物から見た生物の進化(仁井一禎著:共立出版)

 生命の進化を語るとき、ほとんど多細胞生物の進化について語られ、その前の単細胞生物の時代について触れられることは余りありません。はるかに長い期間、単細胞生物の時代が続いたのですが、派手さに欠けるためか、触れられることは少ないようです。

 本書は、生命の歴史40億年のうち、これまであまり取り上げられることがなかった、最初の30億年の微生物の時代の進化を主題として扱い、原核生物~真核生物の進化を一連のつながりのなかで解説するものです。
 動物や植物の祖先として、細菌や古細菌のような原核生物が大変重要であることは、皆さんあまり考えたことがないかもしれません。ところが、細菌の進化は、我々多細胞生物の進化に大変重要な出来事の多くを包含していることが、細菌の系統進化研究の進歩により明らかにされています。我々を形作る細胞一つ一つが核を持った細胞であり、その真核細胞の誕生をめぐる物語が細菌の進化の中にあるのです。そして新しい技術や解析法を駆使して世界の研究者によって進められた真核生物の祖先探しの努力を紹介し、なぜ、「われら古細菌の末裔」なのかについての理解にいざないます。