院長ブログ

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院長の本棚(番外編)⑧

香子 紫式部物語①~⑤(帚木蓬生著)

源氏物語は誰でもご存じかと思いますが、実際に全巻を読んだ方はそれほど多くないのではないでしょうか。私もその1人でした。

ちょうどNHKの大河ドラマ「光る君へ」が始まって、タイミングよく出版された本書の第1巻を興味半分に読み始めたところ、紫式部の物語・小説かと思ったら、なんと、源氏物語の現代語訳が差し挟まれた作中作とも言える二重になった物語小説でした。読み始めるととても興味深く、源氏物語の帖ごとに、香子のエピソードや帖の書き始めのきっかけなどが語られ、また源氏物語の現代語訳も読みやすかったので、続刊の出版が待ち遠しく、ついに5巻まで読了しました。実は著者の帚木蓬生氏は私と同業の精神科医で、以前から愛読していた作家の1人なのですが、世界的な名著・古典を柱にしたこのような大作を描き出してくれて、大変嬉しいです。内容は大河ドラマとはだいぶ筋書きが違いますが、近年の研究を下敷きにした大変しっかりした構成で、引用文献なども示されており、こちらの方が遥にリアリティがあると思います。

帚木氏は香子(紫式部)に、源氏物語について「書かなければならないのは、女すべてのはかない去就と、けなげな心の内だ」と語らせており、光源氏や夕霧、薫が主軸に物語は進みますが、彼らを取り巻く多彩な女性の群像を描きだし、男中心の、あるいは私小説的な日記などの多かった時代の中で先進的だったようで、それが現代まで読み継がれている理由なのかもしれません。また、香子自身の生涯・境遇についても、大変多彩な展開が見られ、興味が尽きません。ちなみに、著者名の「帚木」「蓬生」も源氏物語の帖名からとられています。

ぜひ皆さんもお手にとってお読みになってください。全5巻をOT室の「院長の本棚」に寄贈しました。