
院長ブログ
院長の本棚(番外編)⑩
MORAL 善悪と道徳の人類史 ハンノ・ザウアー著 長谷川圭訳 講談社 【令和7年6月】
人間は、どのようにしてMORAL(モラル、道徳)を持つようになったのだろう?」がこの本のテーマです。著者は若手のオランダ・ユトレヒト大学哲学・宗教学部准教授。善と悪、道徳が専門領域の方です。この本では、人間のモラルの基本は「個人の利益 < 共同体の利益」であり、脆弱なホモサピエンスが生き延びるにはそれが最良の手段だった、と教えてくれます。500万年前から50万年、5万年、5000年、500年、50年、5年と「時代ごとの正しさの歴史」を、哲学、進化生物学、統計学などの視点からあぶり出し、更には、経済格差、人種・ジェンダーマイノリティへの差別などについても切り込みます。モラルの起源が理解できれば、モラルが揺らいでいると感じる今を見つめたり、モラルの未来も見えてくるでしょう。