
院長ブログ
院長の本棚番外編⑭
中国と台湾:危機と均衡の政治学 松田康博著 慶應義塾大学出版会刊
台湾研究、安全保障研究を専門にしている著者が、21世紀になってからの中国と台湾の関係を、広汎な情報をまとめ論じた大著です。中国と台湾の歴史的背景について概説したあと、中国と台湾の政権の動きに合わせてその危機と均衡の変遷を示し、そして、これからについてはシナリオ・プランニングという手法で可能性を整理・呈示しています。台湾の2大政党の交代が大きな要因となっていることや3期目を迎えた習近平政権の影響に加え、台湾の経済成長とそれを上回る速度で進展中の中国経済の力がこれからどのような影響を与えるのかを議論しており、また、香港に対する中国の対応の激変が台湾に与えた影響や、中国と台湾の新型コロナに対する対応の異なりとその後の経緯が大きな転換点となったことが指摘されています。時の日本の総理大臣の発言に中国が過剰とも言える反応をしていることの背景にあるものとは何か、を教えてくれます。今後の可能性については、想定の困難さを実感するところはあるものの、複雑で錯綜した中国と台湾の関係の歴史と未来を語った本格的な著作を読み大変勉強になりました。